肝機能障害(肝障害)を指摘されたら
各種健康診断や検査で肝機能障害を指摘される人は少なくありません。ではそのような場合どのようにすれば良いでしょうか。【経験、知識豊富な肝臓専門医を受診する。】事がとても大事になります。ではどのような原因があり、なぜ経験、知識豊富な肝臓専門医の受診が大事であるかを以下に説明しましょう。
肝機能障害の原因
肝障害といっても原因が多岐にわたるため対処法も原因によって違います。
原因としては①脂肪肝(肥満や生活習慣病) ②アルコール性肝障害(飲酒によるもの) ③B型肝炎(B型肝炎ウイルスによるもの) ④C型肝炎(C型肝炎ウイルスによるもの) ⑤A型肝炎、E型肝炎、サイトメガロウイルス性肝炎、EBウイルスなどによる各種ウイルス性肝炎 ⑥自己免疫性肝障害 ⑥原発性胆汁うっ滞性肝炎 ⑦甲状腺機能低下症 ⑧薬剤性肝障害 ⑨胆管結石、肝腫瘍、胆道系腫瘍 ⑩過度な運動により筋肉由来のAST(GOT)が上昇する場合など様々です。
また上記の肝障害でも肝臓のダメージが急激な急性肝障害、慢性的な慢性肝障害があります。どちらにせよ肝臓のダメージが強く黄疸や腹水など出現している場合は緊急での対応が必要となることもありますので注意が必要です。
最近増加している脂肪肝
昨今増加しているのが脂肪肝です。これは飽食とともに増加しています。またコロナ渦による運動不足も影響しています。体重の増加と共に肝臓が脂肪を蓄えることにより起こります。肥満や糖尿病、高脂血症や高血圧と合併することが多いです。これも肝硬変や肝臓癌の原因となり得ますがさらに肝硬変、肝癌が進行しない限りほぼ無症状です。
以前は〈脂肪肝は放置しても大丈夫〉と言われている時代もありましたがそれは明らかに間違いであることが現在はわかっています。
なぜかというと脂肪肝の中には炎症を伴う脂肪性肝炎と伴わない単純性脂肪肝があり炎症を伴う脂肪性肝炎は炎症の進行とともに肝線維化→肝硬変→肝癌と進行していきます。一方単純性脂肪肝は炎症を伴わなければそのままですが最近の知見では単純性脂肪肝もいずれは炎症を伴い線維化が進行するともいわれております。また最近は脂肪肝は生活習慣病の一つと捉えられ従来の非アルコール性脂肪性肝疾患:NAFLD(non alcholic fatty liver disesase)から代謝異常に関連する脂肪性肝疾患:MASLD(metabolic disfunction-associated steatotic liver disease)への名称の変更が学会で提唱されています。
こちらもまずは診断し患者さんそれぞれの病態を把握し治療に繋げることが大事です。
脂肪肝の治療は食事運動療法で体重、脂肪を落とすことや併存する高血圧、高脂血症、糖尿病の治療、また場合により抗酸化作用のあるビタミン剤や肝庇護薬などを内服することもあります。
いつの間にか進行しているアルコール性肝障害
こちらも最近増加しています。どの程度の飲酒で肝障害が発症するかというと男性では1日アルコール摂取量60g(日本酒換算3合)、女性では40g程度(日本酒換算2合)を数年以上持続すると発症すると言われております。こちらもアルコール性肝障害→アルコール性脂肪肝→アルコール性肝線維症→アルコール性肝硬変へと進行します。また急激に発症するアルコール性肝炎(肝炎と肝障害は異なる病態です。医師など医療関係者でもアルコール性肝障害とアルコール性肝炎の相違について理解されていない事は少なくありません)、腹痛、発熱を伴うアルコール性肝炎は時に重症化し生命に関わることもあるので注意が必要です。
治療はやはり減酒、禁酒が基本となります。またどの程度進行しているのかを把握して進行度により適切な治療や必要な検査が違ってきます。
各種ウイルス性肝疾患
こちらはそれぞれ急性、慢性、また各種ウイルスにより治療法が異なるためまずは適切な診断が大事となります。B型肝炎やC型肝炎は以前は難治例や治療困難がありましたが現在は薬が進化し多くがウイルス除去あるいはウイルスの制御が出来るようになっています。
自己免疫性肝障害(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)
まずは適切な診断が必要ですが場合により肝生検(肝臓の組織を針で刺して採取し病理診断する)や内視鏡的逆行性胆管造影(ERCP)が必要となることもあります。治療は免疫抑制剤や胆汁排泄促進剤など疾患、病態により決定していきます。
甲状腺機能低下症、薬剤性肝障害、胆管結石、肝腫瘍、胆道系腫瘍、
過度な運動により筋肉由来のAST(GOT)が上昇する場合
こちらはそれぞれ診断し病態によりそれぞれに治療をしていくこととなります。
肝機能障害を指摘されたら
専門医による適切な診断を受けることが重要です
そして更に大事なのは肝臓病はかなり進行しないと症状が出ないということです。肝機能障害を指摘されても大半が無症状です。この無症状の時に適切な診断、治療をすることが重要です。なぜなら肝臓は【沈黙の臓器】ともよばれ倦怠感や浮腫、黄疸、腹水(腹部膨満感など)などの症状が出現している場合はかなり病状が進行し治療が手遅れになるほど進行している場合が少なくありません。
このような肝臓の事は一般的にも認知度が高いとは言えず、また肝臓病は多岐にわたる為経験、知識とも豊富な肝臓専門医の対応が必要になります。
サプリメントで肝機能の数値が変わる?
注意したいのは現在使用、販売されている薬剤、市販薬、サプリメントなどはいずれも薬剤性肝障害の原因となりうるということです。肝臓に良いとされるウコンなどは頻度的にも上位にくる薬剤性肝障害の原因になっていることがわかっています。
肝機能障害を指摘された場合の検査について
いずれの原因にしろまずは原因究明が必要です。原因検索としてはまずは問診、診察、家族歴、内服歴、血液検査、腹部エコー検査などが主なものです。
大事なのはやはり知識、経験が豊富な専門医の受診が推奨されます。
肝機能障害(肝障害)と言われたらまずはきちんとした肝臓の専門医を受診し相談してください
当院では肝臓専門医が診療にあたり主に血液検査、エコー検査により診断、適宜治療をしていきます。